医療系国家試験の解説サイト
国試かけこみ寺です!
令和2年2月19日(水)に実施された
の臨床検査技師国家試験問題について
一部の分野をわかりやすく解説していきます!
問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp200414-07.html)で公開している問題を引用しています。
問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
MT66-AM82:HLA クラスⅡ抗原をもつ細胞はどれか。
1.血小板
2.好中球
3.赤血球
4.NK 細胞
5.マクロファージ
基本用語の整理からいってみましょう!
- HLA(Human Leukocyte Antigen)とは
HLAは日本語では、ヒト白血球抗原といいます
読んで字の如く、ヒトの白血球がもつ抗原ですが
実際には、全身の細胞がもっています
その種類にクラスⅠとクラスⅡがあるわけですね
・HLAクラスⅠ
全身の有核細胞、血小板にある
(※赤血球は核がないのでHLAもっていません)
・HLAクラスⅡ
クラスⅡは限定的な細胞に存在しており、具体的には
マクロファージ・単球・Tリンパ球およびBリンパ球 に発現しています
※MHCとの違い
MHC:主要組織適合遺伝子複合体
という言葉も聞いたことがあると思います
MHC自体は生物が自己と非自己を認識するための重要なタンパク質です
実はこれは、ヒトにおいてはHLAのことなのです
すなわちMHCクラスⅠ=HLAクラスⅠ
と言っているのと同じです
MHCとは生物全体でくくった場合の呼び名です
例えば
マウスであればH-2がMHC
ヒトであればHLAがMHCである
といった使い方をします
MT66-AM83:Th1 細胞が産生するサイトカインはどれか。2つ選べ。
1.IFN-γ
2.IL-2
3.IL-4
4.IL-5
5. IL-10
Th1とTh2はヘルパーT細胞の2つの役割を表しています
ざっくり説明すると
Th1は細菌・ウイルス感染
Th2はアレルギー反応
この2種類の反応を担当するT細胞は別々にいる、ということです
そして、このTh1とTh2、どちらも指令を出しますが
その指令が選択肢にあるサイトカインなんですね
Th1:細菌・ウイルス感染ではIFN-γ、IL-2
とにかくこれを絶対に覚えましょう
特にIFN-γはB細胞に抗体を作らせるための重要な指令です
IL-2は他のT細胞をさらに増殖・分化させる役割があります
MT66-AM84 交差適合試験において間接抗グロブリン試験の主試験が陽性になる原因はどれか。2つ選べ。
1.連銭形成
2.洗浄回数の不足
3.低頻度抗原に対する抗体
4.患者の直接抗グロブリン試験陽性
5.提供者の直接抗グロブリン試験陽性
間接抗グロブリン試験は
別名:間接クームス試験ともいいます
間接に対して直接クームス試験というのもありますね
クームス試験は患者血中の不規則抗体を検出する検査です
クームス血清とは抗免疫グロブリン抗体です
もし、患者赤血球に不規則抗体が結合している場合
クームス血清がその抗体を架橋(つなぎ合わせ)することで
血球が凝集するわけです
直接クームス試験は既に赤血球と不規則抗体が結合している場合
患者赤血球とクームス血清が直接反応し、凝集します
一方、間接クームスは
患者血清を分離し、含まれている不規則抗体を
試験用の赤血球(交差適合試験では供血者の血球)と反応させ、
そこにクームス血清を反応させ、凝集させる
患者血清中の不規則抗体を試験用の赤血球と結合させる
という過程が、間接的にクームス血清と作用するというわけです
問題の方に入りますが、
交差適合試験は輸血における、供血者と受血者の輸血で
副作用がないかどうかを実際に確かめる検査です
受血者の血清中に、供血者の赤血球に対する抗体が本当にないか調べるのが主試験
供血者の血清中に受血者の赤血球に対する抗体が本当にないかを調べるのが副試験です
主試験で陽性が出た場合は、供血者の赤血球を輸血すると
溶血するわけなので、輸血はできないです
改めて問題を見てみると
MT66-AM84 交差適合試験において間接抗グロブリン試験の主試験が陽性になる原因はどれか。2つ選べ。
1.連銭形成
2.洗浄回数の不足
3.低頻度抗原に対する抗体
4.患者の直接抗グロブリン試験陽性
5.提供者の直接抗グロブリン試験陽性
間接抗グロブリンの主試験は
患者血清+供血者血球 これを頭に入れて考えましょう
1.連銭形成は赤血球がコインが重なったように凝集することです
これは間接抗グロブリン試験でなく、生食法で観察が可能です
主にIgM、ABO不適合の可能性が考えられます
2.洗浄回数の不足
クームス血清は抗免疫グロブリン抗体なので、
免疫グロブリンならば何でもくっつくわけです
つまり、洗浄が不十分の場合、患者血清が残っていると
クームス血清が患者血清中の様々な抗体と反応し、
本来結合するはずの目的の抗体に反応しない
すなわち、偽陰性になる可能性があるわけです
このことから、問題の答えとはなりません
3.低頻度抗原に対する抗体
間接クームス陽性で考えられることはまずこれです
珍しい抗原に対する抗体にあたってしまったというわけです
ABO以外の、いわゆる不規則抗体が原因です
4.患者の直接抗グロブリン試験陽性
これの意味するところは
患者の赤血球に不規則抗体が吸着していた
ということです
間接クームス主試験では、患者血清+供血者血球ですから
赤血球は関与しないため、主試験陰性と考えられます
一方、副試験では供血者血清+患者血球であり
患者血球にはすでに抗体が結合しているため、
間接クームス副試験陽性となります
5.提供者の直接抗グロブリン試験陽性
これの意味するところは、供血者血球に既に抗体が結合している
すなわち、間接クームス主試験は、患者血清+供血者血球ですから
陽性になってしまうというわけです
以上より、答えは3、5となります
このように原理をしっかり考えれば答えは導き出せますが
間接抗グロブリン試験の主試験陽性の原因は
・低頻度抗原に対する抗体の存在
・供血者赤血球の直接抗グロブリン試験陽性
これら2つである、と割り切って覚えてしまうのも1つの手でしょう
輸血は行っている検査・作業・状況をしっかり考えれば
ロジカル(論理的)に解けるので得意な人には
納得のいきやすい分野ではありますね
MT66-AM86:検査材料の取扱いで正しいのはどれか。
1.寒冷凝集反応用の血液を4℃で血清分離した。
2.免疫電気泳動用の血清を56 ℃で 30 分処理した。
3.クリオグロブリン検査用の血液を4℃で血清分離した。
4.直接 Coombs 試験用の血液を検査直前まで4℃で保存した。
5.寒冷活性化のある検体の補体価CH50測定に EDTA 加血漿を用いた
これは各選択肢をしっかり見ていきましょう
1.寒冷凝集反応用の血液を4℃で血清分離した。✕
寒冷凝集を見たいのに、4℃で遠心してしまうと
その時点で凝集してしまうので✕です
2.免疫電気泳動用の血清を56 ℃で 30 分処理した。✕
56℃、30分処理は補体の非働化が目的です
補体の非働化が必要なのは、補体の影響が邪魔なとき
免疫電気泳動では補体の影響も見ますので必要はありません
3.クリオグロブリン検査用の血液を4℃で血清分離した。✕
クリオグロブリンとは低温で凝集する免疫グロブリンであり
M蛋白の一種です
これも検査前の分離を4℃で行ってはいけませn
4.直接 Coombs 試験用の血液を検査直前まで4℃で保存した。✕
直接クームス試験は1つ前の問題で説明しましたが、
赤血球に既に感作(=結合)している抗体を検出するわけですが
4℃で保存すると、寒冷凝集素や補体など、本来ついていなかったものが
感作してしまう恐れがあるので、4℃保存はできません
5.寒冷活性化のある検体の補体価CH50測定に EDTA 加血漿を用いた
以上が✕なので、これが正解になります
CH50は補体価(補体の活性化度合い)を測る検査です
寒冷活性化のある検体というのは、低温で補体が活性化してしまう
という意味で、補体が消費されてしまい、CH50が本来より低下します
これを回避するためには、補体活性化経路に必要な
CaやMgイオンをEDTAでキレートしてやればよいわけです
よって答えは5,になります。
免疫・輸血はしっかり仕組みを理解しなければ
なかなか納得のいく答えにたどり着けません
かなり解説が長くなってしまいましたが、
ぜひ何度でも読んで理解を深めて問題をとけるようにしていきましょう!
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