医療系国家試験の解説サイト
国試かけこみ寺です!
平成31年2月20日(水)に実施された
第65回臨床検査技師国家試験問題について
一部の分野をわかりやすく解説していきます!
問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp190415-07.html)で公開している問題を引用しています。
問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
MT65-AM40 グルカゴンによって促進するのはどれか。
1.糖新生
2.乳酸産生
3.糖の取り込み
4.グリコーゲン合成
5.遊離脂肪酸の取り込み
グルカゴンといえば血糖値を上げるホルモンですが
実際に体の中で何が起きているかも知る必要があります
同時に血糖値を下げるホルモン、インスリンについても確認しましょう!
そもそも、血糖値を下げる、血糖値を上げるとは
どういうことなのか
それは
血糖値を下げるとは、血中のグルコースを細胞内に取り込むことです。取り込んだグルコースは解糖系で消費する、グリコーゲンを合成して溜め込む、などされます。
血糖値を上げるとは、血中のグルコースを増やすこと。グリコーゲンを分解したり、解糖系の逆反応である糖新生を行う、などがあります。
これらの観点から選択肢を見てみると
1.糖新生
糖新生とは、ピルビン酸からグルコースを作り出す反応のことです
肝臓と腎臓で行うことができます
グルコースを作り出している=血糖値を上げる ことになりますから
グルカゴンの作用は1.が正解となります
2.乳酸産生
乳酸の産生は嫌気呼吸による解糖で行われます
乳酸産生の促進は特にホルモンとは関係はないです
3.糖の取り込み
4.グリコーゲン合成
血中の糖を細胞に取り込み、血糖値を下げる
取り込んだグルコースは、グリコーゲンとして溜め込む
これらはインスリンの作用になります
5.遊離脂肪酸の取り込み
遊離脂肪酸は一見血糖値と関係ないように思えますが、
実はインスリンは遊離脂肪酸の取り込みを促進します
これはグリコーゲンの合成には限界があるのに対し、
中性脂肪の合成にはほとんど限界がないからです
(余った糖というのは脂肪に変化して蓄えられるのです)
つまり
インスリンはグルコースや遊離脂肪酸を細胞内に取り込み
グリコーゲンや中性脂肪の合成を促進する、といえます
MT65-AM41 グルコースをグリコーゲンとして蓄える臓器はどれか。2つ選べ。
1.脳
2.肝 臓
3.心 臓
4.腎 臓
5.骨格筋
グリコーゲンは肝臓と骨格筋で蓄えられます
これは基本的な知識なので必ず覚えておきましょう!
ちなみに(以下細かい話のため覚えなくても大丈夫かと思いますが)
・グリコーゲンの総量が多いのは筋肉(全身の筋肉量が多いから)
・1グラムあたりの貯蔵量が多いのは肝臓です(肝臓は貯める力はすごいが、大きさには限りがある)
さらに
筋肉のグリコーゲンというのは筋肉だけで消費されるため
筋肉でのグリコーゲンの分解が、直接血糖値を上げるわけではありません
言い方を変えると
グリコーゲンの分解による血糖値上昇は、肝臓グリコーゲンに由来する、といえます
MT65-AM42 アルブミンによって運ばれるのはどれか。
1.脂肪酸
2.リン脂質
3.グリセロール
4.コレステロール
5.トリグリセライド
アルブミンの基本的な役割は
・膠質浸透圧の維持
・物質の運搬
大きく、この2点があります
今回は運搬する物質の知識が必要ですね
アルブミンが運搬する物質は
・遊離脂肪酸
・カルシウム(約40%はアルブミンと結合、50%はイオンで存在)
・ビリルビン(水に溶けない間接ビリルビンを肝臓に運ぶ、その状態が長期続くとδ-ビリルビンになる)
・薬物
などがあります
以上から問題の答えは、1.の脂肪酸です
2~5の選択肢にある脂質は、リポタンパク質として血中に存在します
MT65-AM43 血糖コントロール不良の糖尿病で低下する血中成分はどれか。
1.乳 酸
2.HbA1c
3.グリコアルブミン
4.β ヒドロキシ酪酸
5.1,5-アンヒドログルシトール1,5-AG
この問題は国家試験に出る問題として暗記してしまっても良いでしょう
糖尿病(≒血糖コントロール不良)で低下するものは
1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)です
糖尿病では当然、糖に関する数値、ケトン体などは上昇します
低下する成分では1,5-AGが非常によく聞かれるので
過去に何度も出ているのでぜひ覚えておきましょう!
1,5-AGはあらゆる食品に含まれる糖質です。特に代謝されることもなく、血中に一定量存在し、腎で再吸収・排泄されます。糖尿病で高血糖となると、1,5AGの再吸収が阻害され、尿中の排泄量が増えます。そのため、糖尿病では血中1,5-AGは低下します。
MT65-AM44 血中薬物濃度測定が有用とされる薬物の特徴はどれか。2つ選べ。
1.至適投与量の範囲が広い。
2.薬物アレルギーを起こす。
3.至適投与量の個人差が小さい。
4.薬理作用が血中濃度と相関する。
5.過剰投与が重篤な有害作用を起こす
血中薬物濃度測定=TDM
は薬剤師だけでなく、臨床検査技師が担うことも多いです
TDMの基本は
血中の薬物濃度が高くならないよう管理することです
(治療に必要な濃度=治療域 を超えると
体に有害な濃度=中毒域 となってしまうからです)
選択肢を見ながら考えていきましょう
1.至適投与量の範囲が広い。
至適投与量とは治療に必要な濃度を維持するための薬物量といえます
この範囲が広ければ、簡単には中毒になりませんのでTDM対象ではありません
2.薬物アレルギーを起こす。
そもそも薬物アレルギーが起こる薬を投与するのは危険なのでTDMは無関係です
3.至適投与量の個人差が小さい。
至適投与量とは治療に必要な濃度を維持するための薬物量です
この個人差が大きい場合というのは、薬物の代謝能に関係します
ある薬では人によって代謝される速度が違うことがあります
このように個人差が大きい場合は、TDMが必要ですが
小さい場合は必要ないと言えます
4.薬理作用が血中濃度と相関する。
薬理作用が血中濃度と相関するのであれば
血中濃度がわかればコントロールしやすいと言えます
このことから、TDM対象となりえます
5.過剰投与が重篤な有害作用を起こす
これはTDM対象となる最もわかりやすい条件ですね
ということで、答えは4,5となります!
↓対象となる薬剤などはこちらで詳しく解説しています
今回はここまでです!ではまた!
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